サランヘヨ(愛してます)
“貴方の事なら全て覚えている。目を閉じれば……。”この歌詞が流れていたドラマ、そう韓国ドラマの『冬のソナタ』だ。運命の人との出会いと初恋、時を経て結ばれる純愛物語が、美しい風景とともに紡ぎ出されたドラマだ。2002年~2003年に放映された冬ソナを毎週食い入るように見ていた。 ラブストーリの展開と共に、今失われつつある、親や目上の人を敬い大切にする気持ちや、人を思いやる事が描かれていた。
私がこのドラマを再放送、再々放送も見続けたのは、主役のペ・ヨンジュンの魅力だ。
ひとめ見ただけで心がとろけてしまうような微笑み、甘い声、穏やかに包み込む包容力と知性。
そんなヨン様に会いたくてドラマを見ていた。冬ソナの5年前、私は韓国と出会った。
今63歳の私が、保育士をしていた40代の頃、園児に韓国の子どもがいた。父親が日本人で、母親が韓国の人だった。子どもに『ママ』ではなく『オンマ』と呼ばせてと言った。自分の国に誇りを持っていたこのオンマから、たくさんの事を学んだ。
在日韓国人の置かれている現実や差別。
一世の人達が、差別と貧困の中で生きてきた過酷な人生……。知らない事がたくさんあった。同時期私は、オンマのお母さんつまり園児のお祖母ちゃんと、ボランチィアをしていた夜間中学で出会った。
オンマから聞いたお祖母ちゃんの人生と、必死に文字を学ぶ姿は、この人が生きてきた社会を構成している日本人の一人として、私の心の奥深く刻まれた。
そして、オンマとの出会いから5年経った頃『冬ソナ』を見たのだ。 同じアジアの国として身近に感じたし、偏見なく日本と韓国の歴史や文化を知りたいと思った。私と同じ様に多くの人が、そう思ったのではないだろうか。
冬ソナは、単に純愛物語ではなく、見た人に様々な影響を与えたドラマだと思う。
それは、ヨン様の功績だと思っている。
ヨン様と同じく、我がつれあいもメガネをかけている。なんとか彼に似せたくて、ヨン様がドラマで着ていた、うぐいす色のカーデガンを着せた事がある。
しかし、彼の魅力にはほど遠くダメだった。ヨン様が出てくるシーンは、正座をして見るほどファンだった。その後、彼を越える人に出会っていない。
サランヘヨ、私に新たな韓国との出会いをくれたヨン様。
-fin-
2015.08.11
『テーマ忘れられないTV』をテーマに書いたエッセイです。