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買い時、潮時、思いよう

 買い物は、買う人の性格がでる。それを、私がつくづく思い知ったのは、夏に冷蔵庫を買った時だ。
 使用15年の冷蔵庫の製氷機能が壊れた。

 しかし、実はそうではなかったと解ったのは新冷蔵庫を注文して帰宅した時だ。

 私は壊れたと思い、すぐに大型家電店に走った。まさしく走るように行った。

 行く車中で、『2人家族だから小さいのを買おう、安いのを買おう』と心の中で呟き決心した、はずだった。

 店に入り、顔馴染みの営業の人を指名した。その人がにこにこと「いらっしゃいませ、まいど」と近づいてきた時、たぶん決心が崩れていたのだと思う。
「これが、売り上げ1位、これが3位です」と説明した。私はそれを聞くより、値段ばかりを見ていた。そして、決心どおり「この小さいのにしますわ」と指さした。
 営業マンは「奥さん、今やったらこっちの1位のがお得ですよ、値段そう変わらんようにさしてもらいますわ、お得意様やし」と言った。その瞬間、『値段変わらんの、いいやん』と思うと同時に、「こっちにかえますわ」と言っていた。そばで、一部始終を見ていたつれあいが、大きく目を開き、口は『えっ』と動いたのが見えた。          
 注文をすませ、私は機嫌良く帰宅し、冷蔵庫を開けた。な、なんと氷が出来ているではないか。「うっそう!」

 その時から、「買わなければよかった、小さいのにしといたらよかった」と同じ事を繰り返し繰り返し言うようになった。
 つれあいは、「ちょうど買い時やったんや」「そやけど」「今のはエコで節電になるし、買い換えの潮時や」同じやりとりが続くと、さすがにつれあいも「ええかげんにしいやあ」と怒った。あの時、何故大きいのを指さしたのか、壊れたと思っても様子をみて、判断しなかったのか、とくよくよ考えた。
 これが、私の性格だ。すんだ事をいつまでも後悔する、様子をみないですぐ決め、決めたことを思い悩むのだ。
 さらに追い打ちをかけ悔やむ事があった。
 娘が冷蔵庫を見て、「壊れてなかったら、ほしかったわ」と言った。「あーあ、処分しないで、置いといたらよかった」と、新たな後悔がはじまった。
 冷蔵庫買い換え顛末記を友人達に話すと、そろってこう言う。
「買い換え時やったんや」
 そうだ、良かったんだ、買い時、潮時だったのだ。物は思いようだ。
 シルバーの5ドアーの冷蔵庫は、今日も快調に動いている。

-fin-

2015.02.15

『買い物』をテーマに書いたエッセイです。

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