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グッバイ マイ フレンド

 今日は年に一度の(ひらひらコンテスト)の日だ。 このコンテストは『花・フェスティバル』のメインイベントだ。ユニコーンと妖精が組みになり、集めた花びらを空高く舞いあげ、舞い落ちる様の美しさを競う。
 この日一日だけ、いつもは別々の世界に住むユニコーンと妖精が、一緒に過ごせる日なのだ。
 柔らかな青い毛に被われたユニコーンのパルと、橙色の羽をつけ、赤い髪を肩まで伸ばした妖精のルンナは幼なじみだ。パルの母さんと、ルンナのママはその昔親友だったそうだ。       
 だから、パルとルンナは、生まれた時から仲良しなのだ。パルの背中に乗ったルンナは、しりとり遊びを始めた。 
 「パル」  「ルンナ」 「なみだ」 「だりあ」
 パルがしっぽで花びらを集め、ルンナが拾い駕籠にいれていく。赤、紫、青、薄ピンク……。
 ひらひらコンテストで優勝するより、こうして一緒に遊ぶ方が嬉しいのだ。
「パル、たくさん集まったよ」
「ほんと! きっと綺麗に舞うだろうな」
 そう話している時、コンテスト開始のファンフーレが鳴った。
「さあ行こう」ルンナを背中に乗せパルが駆けだした。                   
 金色のたてがみを風になびかせ走る、走る走る。
 ルンナは瞳を閉じると、自分がパルと風が一つになるのを感じた。
 その時、がくっとパルが倒れた。
「い、痛い! ウッ……。足を挫いたみたいだ」
「大丈夫? 立てる?」
 ルンナは腰に結んでいた、緑のリボンをパルの足に巻いた。ゆっくり片方の前足と後足で立ち上がるが、すぐふらふらとよろめき倒れてしまった。
「駄目だ、立てない。ごめんよ、もうコンテストに間に合わない」
 そう言うとパルの目から、涙がすーと落ちた。
「いいのよ、ここで私達だけでコンテストをしよう」
 ルンナは、駕籠から手にいっぱい花をすくうと、ぱあーと空高く舞いあげた。
 青い花、赤い花びら、黄色の花びら。    
 ひらひら、ひらひら、ひら……。
 花びらは、たてがみに、顔に手のひらに、舞い落ちた。

 フェスティバル終了の鐘が鳴っている。
「また来年会おう」
「足が早く治るように祈ってるよ」
「さようなら」
「サヨウナラ」
 それぞれの世界に帰る道を、何度も何度も振り返った。そして互いの姿が、見えなくなるまで手を振っていた。
 グッバイ マイ フレンド。

-fin-

2013.12.09

『ユニコーン』をテーマに書いたフィクションです。

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