top of page

それから君はどこへ行ったのだろう

 山に住む赤おには、心の優しい鬼。
 人間と仲良くしたいのにうまくいかない。
 そこで友達の青おにが、悪役をかってでて、一芝居をうつ。そのお陰で赤おには人間と仲良くなる。しかし、青おには姿を消す。赤おには青おにの友情に泣く……。という『泣いた赤おに』の物語。しかし、この話しには伝えられていない物語があった。

 人間と仲良くなりたい赤おには、友達の青おにに悩みを相談していた。
 青おには「それじゃ、僕が村で大暴れするから、君が村人を助ける役になるんだ。きっと人間は君をいい鬼だと思うよ」
「なるほど。でも青おに君に悪いよ」
「いいんだ、友達じゃないか」
 二匹の鬼は明日の一芝居の打ち合わせをしてそれぞれ、山の崖の上に帰って行った。
 青おにが悪役の事を考えていると、何故か『フー』とため息がでた。その息の中から『ちっちゃな青おに』が飛び出して、大きな青おにを見上げながら言った。
「悪役になるのはよしたほうがいいよ」
「誰だい君は。僕と同じ青おにじゃないか、ほっといてくれ」と言うと、明日の一暴れの練習をした。牙をむきだし、目を光らせ足をドンドン踏みならした。
 すると、どこかに隠れていた『ちっちゃな青おに』がまた現れた。
「青おにさん、損な役まわりの悪役なんか止めときなよ!」
「いいんだ、友達だから」
「止めるんだ! 赤おに君だけ、人間と仲良くなって、君は独りぼっちになるんだよ」
「いいんだ、友達だから」
「ダメだ!君が思う程、赤おに君は友達と思っていないかもしれないよ」
青おには『ちっちゃな青おに』が一生懸命止める言葉を聞こうとしなかった。そして大声で「ほっておいってくれ」と叫んだが、『人間と仲良くなったら、もう僕の事を忘れてしまうかもしれない』と思った。
 そんな自分の気持ちを払いのけるように悪役の練習をした。そして、次の日青おには村で大暴れをした。

 人間と仲良くなった赤おには、久しぶりに青おにを訪ねると、戸に一枚の紙が貼ってあった。
『赤おにくん、ぼくはどこにいようと、きみをおもっているでしょう。
 さようなら、きみのしあわせをいつも、いのっているよ。
 どこまでも、きみのともだち
                               あおおにより』

-fin-

2014.10.16

『昔話』をテーマに書いたフィクションです。

bottom of page