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姉妹(しまい)になる日

 私があの子を意識したのは、中学2年のクラス替えの日。普通するでしょ、私の名前が『桜』であの子が『桃』なんだよ。
「私はさくら、貴女はもも?」
「うんももだよ、貴女はさくら?」
 この瞬間から、4月生まれの私は、6月生まれの桃を妹みたいと思うようになった訳。
 ちなみに、何故6月生まれなのに『桃』と名付けられたかは、果物の桃がパパの好物なんだって。私達は、とにかくよく似てるの。
 アニメ大好き、スイーツ大好き、運動はちょっぴり苦手。そして、一番似てるのは私はママと、桃はパパと2人暮らし、って事なの。
 私達はペアールックで、カラオケに行ったり、アニメをよく見に行ったよ。でもね、盛り上がり指数がマックスになった時、別々の家に帰るのがいつも淋しかったんだ。
「ずうーと一緒にいたいね」と、話していた時、桃がすっごい事言ったの。
「桜、私達姉妹になろう、パパとママが結婚すればいいじゃん」
 上手い具合に条件はバッチリ、私のママは38歳、桃のパパは40歳、共にバツいちの独身。
 桃の(姉妹になろう)発言から、私達の(パパママ再婚作戦)の話し合いが始まった。
 偶然を装った劇的な出会い、それから恋におち、再婚までのストーリーをどうするか?
 最初の頃、話し合いの場所は、カラオケルームだったけど、桃がマイクを放さず、歌ってばかりでちっとも話が進展しないんだ。
 そこで、次なる密談場所を大型ショッピングモールの、休憩スペースに変更した。
 騒がしい音や、いろいろな会話が飛び交う場所こそ、密談にぴったりなのよ。誰も人の話を聞いていない。私達だって、隣りのテーブルの人に関心なーいし。
 私と桃は、パパとママの好きな食べ物、音楽、好みのタイプ等、リサーチして情報交換した。デートするならどこがいいのかを、話したけど、38歳と40歳のカップルはどこへ行きたいのかよくわからなかった。
 劇的出会いってどんな感じか、テレビの恋愛ドラマを見て、研究しなくては、と作戦会議で決まった。それより、私のママも桃のパパも、もう二度と結婚しないと思っているらしい事が、最大の問題なの。
「あーあ、バツいちの男と女の気持ちはわかんないよー」と私が言うと「桜、なに言ってるのよ、私達が姉妹になるんだよ、待ちどうしいなー」と桃はニッコリ笑いながら言った。
 さくらとももが、同級生から姉妹になる日。「姉妹!」なんて素敵な心地よい響きだろう。
 その日を夢みて今日も作戦会議は続く。

-fin-

2017.06

『密談』をテーマに書いたフィクションです。

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